2)3D映像のしくみ |
3D映像は、人が両眼で物を見るしくみを利用しています。通常、人は左右の目の間隔により、目の前にある物体を右眼と左眼と少し違った角度から見ています。この右眼と左眼から入った2つのイメージを頭の中で一体化することにより物体を立体的に見ることができます。この右眼と左眼のイメージの差を両眼視差と呼びます。3D映像では人為的に視差をつけた画像を右眼と左眼に別々に見せることにより映像に立体感を持たせています。 |
映画やテレビでは撮影時に右眼用と左眼用の二つのカメラで同時に撮影し合成します。視聴者がその画像を見る際に、特殊なメガネを利用して右眼には右眼用の画像だけが、左眼には左眼用の画像だけが見えるように情報を分離しています。そうすることで両眼視差が生まれ奥行きのある映像を楽しむことができます。 |
一方、任天堂の3DSなどでは、液晶ディスプレイに「視差バリア」と呼ばれるフィルターを貼り付けて、1ドットごとに、右眼もしくは左眼にしか見えないような角度で写すことで、左右の目に別々の映像を見せて立体的に見えるようにしています。 |
3)3D映像はこどもの目によくないの? |
任天堂3DSが発売された際に、「6歳以下のお子様は、長時間3D映像を見続けると目の成長に悪い影響を与える可能性がありますので、2D表示に切り替えてご使用ください。」との注意喚起がされました。また、3Dテレビメーカーのホームページには、「6歳未満のお子さまの3D視聴については、視覚が未発達段階にあるため、必要に応じて医師ご相談ください 」などの記載があります。 |
しかし、New York Times誌には、「3D映像は小児の見る機能の発達に影響しないはずだ。」というアメリカの小児眼科の専門家のコメントが載りました。 |
一方、2011年10月15日には、日本眼科医会のホームページに「国民の眼を守るために 映画、テレビ、ゲーム機で急速に普及!3D映像と上手につきあっていくには?〜3D映像の楽しみ方と視機能への影響〜」という資料が掲載され、そのなかには、 |
|
正常の小児には3D映像視聴はおそらく問題はない。 |
|
6歳くらいまでは両眼視機能(立体視を含む両方の目で見る機能、目の位置をまっすぐに保つ機能も含まれる)が発達する時期と言え、この時期に調節と輻湊(ふくそう)の関係が通常と異なる3D映像を試聴すると、素因のある小児で斜視が出現する可能性がある。 |
|
心配な場合は、眼科医を受診して、素因がないかチェックを受けることが薦められる。 |
|
などと記載されています。3D映像がこどもの目に良くないかどうかは、3D映像が一般的になってからまだ日が浅いため断定的なことはいえない状況だと思います。しかし、少なくとも6歳以下のお子様がおみえのご家庭では3Dテレビの購入は控えられたほうが無難だと思います。 |
4)3D映像を快適に楽しむために |
(1)適切な視聴距離をとりましょう |
ハイビジョンテレビの標準視距離は、ディスプレイの縦径の3倍とされています。具体的には、テレビサイズ:32インチ ⇒ 約120cm、 37インチ ⇒ 約140cm、 46インチ ⇒ 約170cm、52インチ ⇒約190cm、 65インチ ⇒ 約240cmです。この距離よりも近づいて3Dテレビを見ると基準よりも大きな視差が生じてしまって眼精疲労や映像酔いを生じやすくなります。 |
(2)適宜休息をとりましょう |
3D映像を見る場合、目の焦点はディスプレイ上にあるにもかかわらず、人為的な視差により、両眼の視線がディスプレイ上で交わらず、不自然な状況になっています。そのため2D映像よりも疲れやすかったり、ふらつきや吐き気などの映像酔いを生じやすくなります。3D映像を1時間程度見たら休息をとりましょう。お子さんの場合は30分程度を目安にされるとよいと思います。 |
(3)視力を適切に矯正して見ましょう |
2D映像は両眼同じ映像を見ていますので、片方の目が多少見づらくてももう片方の目でカバーできます。しかし3D映像は片目ずつ別の映像を見ていますので、片方の目が悪くてもカバーできず、結果として立体的に見えなかったり、すぐに疲れてしまったりしやすくなります。通常のメガネのうえから3D視聴用のメガネを掛けるのは大変ですが、きちんと視力を矯正した状態で3D映像をお楽しみください。 |
(4)姿勢を正しくしましょう |
3D映像は左右の目が水平にあることを前提に人為的な視差をつけて作成されています。寝転がって見たり斜めから見たりすると左右眼の映像がダブって見えたりして疲れやすくなります。3D映像を視聴する際にはディスプレイに正対して姿勢を正しく保持しましょう。 |
以上のようなことを意識して気をつければ快適に3D映像を楽しんでいただけることと思います。ただし、普段から目が疲れやすかったり、時々ダブって見える人、左右の視力のバランスの悪い人、視線が外れやすい人(斜視の人)は、3D映像視聴前に眼科を受診されると良いでしょう。 |
2012年2月22日掲載 |
|