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ブルーライトって目によくないんですか?

 昨年の12月に、赤崎勇先生、天野浩先生、中村修二先生が青色発光ダイオード(LED)の開発により、ノーベル物理学賞を受賞されたことは記憶に新しいところです。青色LEDの開発により光の3原色が揃い、LEDを使ってどんな色の光も作り出せるようになりました。LEDによる照明はエネルギー効率が良いため節電になるうえ、有害な紫外線や赤外線を出さないため、絵画など美術品の照明としても適しています。
 また、LEDは小さく衝撃にも強いため、スマートフォンやパソコンのモニター、テレビなどの液晶画面の光源として広く使われるようになっています。

 このように優れた点を多くもつLEDですが、網膜に対するブルーライト障害という点では注意が必要です。

青色LEDイメージ図
 電磁波のなかで、私たちが認識できるのは波長400〜800nmの光で可視光線と呼ばれています。それよりも波長の短い電磁波は紫外線、波長の長い電磁波は赤外線です。紫外線や赤外線は眼の角膜や水晶体で吸収されるため網膜までほとんど届きません。

 光による急性網膜障害としては、2012年の金環日食の際に問題となった日光網膜症が有名です。一方、野外活動や日光浴による日光暴露量と高齢期の加齢黄斑変性との因果関係を認めた研究もあり、光による慢性的な網膜障害の結果であると推測されます。また、動物実験において、可視光線のなかでも特に青色光領域の光が網膜に障害を与えると報告されています。

 一方、ブルーライトにより生体リズムが乱されるという問題も出てきているようです。

 ヒトには約1日を基準とする体内時計があります。近年の研究ではヒトの生理機能の内因性リズム周期は平均24時間11分で、24時間よりも長いことが明らかになっています。その内因性リズムを、明るさや気温などの環境因子や、社会的スケジュールなどの外因性要因で調整しながら、実際の24時間のリズムに同調させながらヒトは生活しているそうです。その内因性リズムを24時間に同調させるもっとも強力な因子が光であるとされており、なかでも青色光領域の光が最も高い影響を及ぼすことが動物実験で報告されています。
 このことから、健康的な生体リズムの維持には適切な光暴露が不可欠だと思われますが、逆に言えば不適切な光への暴露は生体リズムを乱すことにつながります。生体リズムの乱れは、単に疲労や睡眠障害といった問題にとどまらず、うつ病、高血圧、糖尿病、肥満などのリスクファクターとなっているといわれています。以前は日の出・日の入りの明暗リズムにより生体リズムが調整されバランスが取れていましたが、近代以降の人工照明によって明暗リズムが不規則となり生体リズムが崩れやすくなっているといえるでしょう。特に青色光領域の光を多く含むLED照明や液晶画面による影響は少なくないと推測されます。

 現在の私たちの生活において、スマートフォンやパソコン、テレビなど液晶光源を見つめる時間が過去とは比べ物にならないほど増えています。目のブルーライト障害を防ぎ、生体リズムのバランスを取るためには、規則正しい生活を送り、夜間は過剰な照明を避け、液晶画面を見るときにはブルーライトカットの眼鏡をかけるといいのではないでしょうか。
2015年2月1日掲載 

小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見が出されました
(2021年10月追記)
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