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子どもの目について〜1
視力と屈折異常(近視・遠視・乱視)
 受験勉強や携帯ゲームの普及により近方を見る頻度が増加した結果、子どもの視力障害の頻度は以前に比べて増加しています。小学生では裸眼視力1.0未満の割合が約1/4であり、中学生では約半数が裸眼視力1.0未満となっています。このように視力に関してトラブルを持っている子どもが多くなっている現代では、眼科医だけではなく保護者のかたが視力に関する知識を持ってお子さんに接することが重要ではないでしょうか。
裸眼視力と矯正視力の違い
屈折異常(近視・遠視・乱視)
心因性視力障害とは
保護者のかたへのお願い
1. 裸眼視力と矯正視力の違い
裸眼視力とは、メガネやコンタクトレンズなどの屈折異常矯正用具を装用せずに測定した視力のことです。一方、矯正視力とは近視や乱視など屈折異常を矯正して測定した視力です。矯正視力のなかには普段装用しているメガネやコンタクトレンズを用いて測定した矯正視力(日常生活視力と呼ぶ場合もあります)と、眼科などで屈折異常を適切に矯正して測定した最良矯正視力とがあります。医学的には、矯正視力というと最良矯正視力のことを意味します。
 裸眼視力が良くないからといって異常があるわけではありません。近視・遠視・乱視は目の屈折状態を示すに過ぎません。各個人により身長が異なるように、屈折の状態にも個人差があります。適切な屈折矯正により視力が1.0以上であれば何の問題もありません。ただし、未就学児では視力が発達途中ですので、視力が1.0なくても異常ではありません。3歳で0.5、5歳で1.0というのが大まかな目安です。小学生以上で最良矯正視力が1.0未満の場合は何かしらの異常があると考えられますので、精密検査が必要になります。
2. 屈折異常(近視・遠視・乱視)
 一般に小さいお子さんには遠視が多く、成長にともなって徐々に近視へシフトしていきます。そのため屈折異常に関しては、未就学児では遠視を中心に、小学校以降は近視を中心に考えていくことが多くなります。
 屈折異常のサインとしては、目を細める、光をまぶしがる、写真を撮ると片目が赤目になることが多い、顔を回して斜めに物を見る、などがあります。もちろんこのような異常があればすぐに眼科を受診していただきたいのですが、軽度の屈折異常では何のサインもないことが多く、視力検査が重要な指標となります。
 幸いわが国では検診制度が充実しており,3歳児健診、就学時健診、学童期以降は毎年の視力検査が行われ、屈折異常をはじめとした眼疾患の発見に貢献しています。しかしこれらの健診にも問題がないわけではありません。3歳児健診では視力検査が家庭で行われるため、保護者のかたによって判断が分かれることもあります。また、就学時健診や、低学年の児童では視力検査が適切に行われていない場合もあると考えられます。その主な原因としては、不完全な片眼遮蔽とお子さんの集中力が低下している場合があります。
 また、10歳頃までは「読みわけ困難現象」といって、字づまり視力が字ひとつ視力よりも悪いことがあります。少なくとも小学校低学年までは字ひとつ視力表を用いた視力検査が勧められます。【図1】
 
お子さんが健診で低視力だった場合は必ず眼科で再検査を受けるようにして下さい。
【字づまり視力表】 【字ひとつ視力表】
【図1】 字づまり視力表と字ひとつ視力表
3. 心因性視力障害とは
 心が要因となって起こる目の病気として心因性視力障害があります。近年では8〜12歳の女児に多いとされています。予後は一般的に良好ですが、他の器質的疾患との鑑別が重要となります。臨床的特徴として以下の点が挙げられます。
・通常両眼性
・視力のわりには、それほど日常生活に支障がない
・眼球自体に異常がない
・学校関係、家庭関係などのストレスがある
・視野検査をすると「らせん状視野」などの異常を検出しやすい
 鑑別すべき疾患としては、下垂体腫瘍などの頭蓋内疾患、錐体ジストロフィーなどの網膜疾患、レーベル視神経症などの遺伝性疾患があります。
 心因性視力障害を有するお子さんに対しては、その言い分をよく聴き、心因を明らかにすることが重要です。心因が明らかになればそれを緩和する方法を模索することができます。しかし、心因がはっきりしない場合もあります。そのような場合でも半年から一年もすると視力が改善することが多いので、焦らずに経過観察を続けていけば良いでしょう。ただ、器質的疾患もなく一年以上も視力低下が持続しているような場合では、心身症の専門医に相談した方が良いでしょう。
4. 保護者のかたへのお願い
 近年普及してきている携帯型ゲーム機は、画面が小さくコントラストも良くないため、どうしても目に近づけて見ることになり、お子さんの目に負担を強いることになります。近くを30分以上凝視していると調節緊張状態となり、近視へとつながります。30分ゲームをやったら10分以上の休憩を入れるように心掛けてください。
 また、ゲームだけでなく勉強についても同様のことがいえます。学校や塾の授業では黒板を見る時間がありますので調節緊張状態にはなりにくいのですが、家庭での学習は近見ばかりになる可能性が高いため、ゲーム機と同様に30分勉強したら10分の休憩を取り入れるようにしましょう。
 近視が進行していてもメガネを掛けたくないというお子さんや、子どもにメガネを掛けさせたくないという保護者のかたがみえになリます。メガネを掛けると近視が進行すると誤解されているかたもみえますが、適切な度のメガネは近視を進行させることはありません。むしろ、よく見えない状態で授業を受けると、黒板が見えなくて眼精疲労をおこしたり、集中力がなくなって授業の理解が遅れたりする可能性があります。ご家庭でテレビを見る時などに目を細めて見にくそうにしている場合は、メガネを掛ける時期になっているとご理解ください。
2005年10月1日掲載 
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